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| ナポリに行きたい ヴィットリオ・デ・シ-カ監督のイタリア映画、「きのう・きょう・あした」は、三都市を舞台にした三つの物語からなっている。ナポリ編が一番おもしろい。主演はマルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ロ-レンで、ふたりは貧しい夫婦役だ。闇たばこを売ったり、役人がこの二人の家財道具を差押えにくるのを近所の人たちが邪魔したり、と今でもありそうなことが温かく描かれている。映画を観たからというわけではないが、ナポリは一度住んでみたい所である。 「ナポリを見て死ね」ということばがある。それほどナポリは美しいということなのだ が、ここイタリア北部ではナポリに代表される南部の都市は不評である。いわく、治安が 悪い、人々が働かない、などなど。ベネチアの治安がいいといっても日本の都市にくらべたら物騒だし、ベネチアの銀行員の労働時間だって、日本の銀行員とは雲泥の差。日本人のわたしには北と南の違いなど五十歩百歩だ。 イタリア中部の町にすむヴィンチェンツォおじさんは、徴兵にとられた40年ほど前、ナポリの駅で居眠りをしていて、はいていた靴を盗まれた。兵隊用のがっちりした編上げブ-ツである。そろりそろりとひもをはずしながら靴を脱がせている泥棒を想像すると笑いがこみ上げる。おじさんはまじめな面持ちでわたしにこういった。「ナポレタ-ニ(ナポリ人)は天才だ。盗めない物は何もない。」車の運転にシ-トベルト着用が義務づけられた頃、ナポリで大いに売れたものがある。肩から斜めに線の入ったシャツだ。これを着て車に乗れば、シ-トベルトを着用しているように見えるからだ。違法には違いないが、何か底抜けに明るくて憎めないものがそこにはある。 よきにつけあしきにつけ、多くの人のもつイタリアのイメ-ジは南部イタリアのものだと思う。外国人観光客がべネチア名物のゴンドラに乗りながら聞きたがる歌はというと、「オ-ソレミオ」「フニクリフニクラ」「サンタルチア」などナポリ民謡ばかり。墨田川を下る納涼船で「会津磐梯山」を歌ってくれといっているようなものである。数年前、ナポリの歌ばかりゴンドラで歌うのはどうか、という市民運動が盛り上がったことがあるが、観光でなりたっているこの街では、観光客の要望に応えざるをえないらしい。今でもゴンドラの上ではナポリ民謡オンパレードである。 ナポリといえばピザが絶品だそうである。ベネチアでおいしいと評判のピザレストランでも、実はナポリのピザ職人が焼いていたりする。イタリア人が絶賛するナポリのピザ。いつかナポリを訪れてこれを食せねばなるまい、と真剣に考えている。
小池 弘美
2001年xx月 |